『山梨いちごの王さまミュージアム』に行ってきた。サンリオの歴史と「みんななかよく」
2026年4月にできたばかりの『山梨いちごの王さまミュージアム』に行ってきた。
きっかけはサンリオが好きな同居人。ここ3ヶ月ほど、ことある度に「行きたい」と言っていて、3連休だしどっか行く?と聞いたところ、行きたい。とのことだった。
個人的にはサンリオに思い入れがあるわけでもなく、同居人との共通の話題として嗜む程度。ただ、昨年は割と夢中で見ていた朝ドラ『あんぱん』にサンリオ創業者の辻信太郎をモデルとした登場人物がいたり、Netflixでは見里朝希監督の『My Melody & Kuromi』が配信されてそれを見ていたりと、比較的サンリオに対する熱が高まっていたタイミングでもあった。
今回、3連休の2日目に行ったのだが、4日前でも予約できた。駐車場も満車というほどではなく、現時点では比較的訪れやすい印象だった。
『山梨いちごの王さまミュージアム』は主に2つの施設にて構成される。『サンリオ歴史館』と『辻信太郎記念館』だ。建物そのものが分かれている。
サンリオ歴史館

サンリオ歴史館は名前通りサンリオの歴史がザックリとわかる展示となっている。
「戦争」と「みんななかよく」
サンリオの歴史は辻信太郎が世界から戦争をなくすための模索の歴史と言っても差し支えない。サンリオの企業理念「みんななかよく」にも、戦争を経験した辻の想いを言葉にした結果だろう。
そして、その歴史はキャラクタービジネスとファンとのコミュニケーションの歴史でもあった。最初のメインの展示はサンリオが現在でも発刊している『いちご新聞』。そのバックナンバー全ての表紙と辻信太郎(いちごの王様)のコラムが電子版で読むことができる。
昨年まで知らなかったのだが、辻は毎年8月号では戦争に関する文章を書いているという。『いちご新聞』は新聞と銘打っているが、言ってしまえばサンリオの広報誌だ。内容も新商品の広告やキャラクターのマンガといったものが多くを占めている。しかし、そのような紙面の中で戦争体験を毎年書いている辻の想いは計り知れず、今年30も半ばにある自分ですら子どもの頃、戦争というものに対する距離感ははるか過去の出来事のような認識をしていた。きっといまの子どもたちであればなおさらだろう。そんな子どもたちが触れるもので戦争体験の文章に触れることができる。というのは大きな意味を感じる。
といっても、それだけではない。

いちごメイトとのコミュニケーション
いかにしてファン(いちごメイト)とコミュニケーションを取ってきたかという歴史はSNSはおろかインターネットのない、ある種牧歌的な時代だったからこその部分も感じられたが、マーケティング的な視点においても大変興味深かった。現代であればSNSで行うようなファンとの交流を、いちご新聞やそこへのお便り投稿、ショップのノベルティ「プレミアム」などを通じて実現していた。その仕組みは時代こそ違えど、ファンコミュニティの作り方は現代だから感じる面白さがある。
この辺はアトロクで以前放送された『ニッポンのカワイイ-世界の見え方が変わる!サンリオが築いた、ニッポンのカワイイ文化を見てみよう-』特集で触れられたものだったが、改めて展示を見て大変興味深かった。
キャラクタービジネスの歩み
『いちご新聞』のバックナンバーで興味深かったのが、マイメロの表記。最初期は「赤ずきんちゃん」と記載されており、「赤ずきんちゃん マイメロディ」「マイメロディ」とキャラクターが固まっていったことに触れられたのも面白かった。
そこから進むとキャラクタービジネスの歴史エリア。大まかにはやなせたかしや水森亜土といったイラストレーターを起用し、ビジネスをしていた「イラストレータービジネス期」とハローキティやマイメロディといったキャラクターを自社で生んで以降の「キャラクタービジネス期」に分けられるのではないか。その間に出版や映像作品制作、テーマパークの事業が展示されていた。
こちらでは懐かしいグッズが数多く展示されていた。

初期のマイメログッズや、サンリオショップのおまけ「プレミアム」、やなせたかしが編集長をしていた『詩とメルヘン』の展示。『詩とメルヘン』は想像していたよりも大きい判形で驚いた。

個人的には最近お気に入りのキャラクター、おさるのもんきちのグッズや懐かしのハローキティ ゲームボーイやサンリオタイムネットの箱の展示までされており、大変テンションが上がった。


こちらのエリアではキャラクターたちが描かれた大きなパネルの展示があり、はなまるおばけの推されっぷりにも驚くなどした(もんきちはすみっこだったぞ)。


辻信太郎記念館

サンリオ歴史館を一通り見たら辻信太郎記念館へ。一度外に出て別館に進むこととなる。
こちらでは辻信太郎の生い立ちからその生涯に渡るサンリオ視点での功績が主な展示となっている。
再現された執務室

一番の見所は館内に再現された執務室だろうか。ここでは展示されているソファに座ることもできる。また、現役(と思われる)サンリオ所属のアーティストによる色紙も展示されており、当たり前のことだが上手い絵を見ることができ、個人的にはマイメロとピアノが描かれた色紙を肉眼で見ることができて眼福であった。また、やなせたかしが辻信太郎の息子に宛てた手紙といったものも展示されていた。
いちごの王さま

辻信太郎の生涯については先にも書いたが、戦争体験がいかに大きいかを感じるものであった。辻信太郎自身はいわゆる「いいとこの子」ではあったが、比較的恵まれた環境に育ったことを、他者に還元するということを自然とできたひとでもあったことを感じた(最も、辻視点で作られた展示なので当然といえば当然だが)。
映像の展示もあり、こちらでも辻信太郎の言葉を聞くことができた。気になったのは、館内の辻信太郎の一人称が一貫して「王さま」だったことだ。そもそもいちごの王さまというキャラクターのモチーフが辻信太郎なので当然といえば当然なのかもしれないが、いち企業のいち創業者の一人称が「王さま」だったことは若干の違和感を感じなかった。といえば嘘にもなる。
また、辻信太郎愛用のサンリオグッズも展示されていた。お気に入りのキャラクターがバッドバツ丸というのは少し意外な気もするが、辻信太郎も男の子ということなのだろうか。
まとめ
サンリオという、おそらく今後日本で同質のものは生まれないであろう企業の歴史に触れられる常設施設というには少し控えめなボリュームな気もしなくはないが、大変満足度の高いものであった。
また、グッズ売り場も控えめなスペースながらあり、ここもグッズで儲ける気満々。というわけでもなさそうな雰囲気は個人的には非常に好ましく思えた。
せっかくの機会なので限定のポストカードとマイメロのステッカー、そして、昨年60年ぶりに再販されたというやなせたかし『詩集 愛する歌』を購入した。

小さい子どもが楽しめるかというと正直微妙な部分はあるが、中学生以上のサンリオ好きであれば、自分が好き好んで手にしているキャラクターグッズの源流に「戦争」という、最も真逆のものがあり、なぜサンリオが「みんななかよく」を掲げるのかを知る施設だった。
そういう意味では非常に満足度の高いもののように感じた。


